
就労継続支援A型の利用料はいくら?負担額の計算方法や免除・軽減制度を解説

就労継続支援A型事業所は、障がいや難病があり、一般企業での就労が難しい方を支える制度です。しかし、利用料がいくらなのか分からず、不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、就労継続支援A型の利用料の仕組みや自己負担額などを詳しく解説します。収入状況によっては無料で利用できる場合もあるため、制度の理解を深めることで不安を減らせます。
料金を把握したうえで、サービスを利用したい方は参考にしてください。
就労継続支援A型の利用料はいくら?
就労継続支援A型の利用料は、原則、サービス提供費用の1割を利用者が負担する仕組みです。1日の自己負担額は400〜1,100円程度が目安で、利用回数によって月額が決まります。
ただし、世帯の収入状況に応じて、月ごとの負担上限額が設けられています。そのため、実際の支払額が上限を超えることはありません。実際には自己負担なく無料で利用している方も多くいます。
以下では、利用料が発生する理由・月ごとの負担上限額を解説します。
利用料が発生する理由
就労継続支援A型では、雇用契約を結び給与が支払われます。しかし、障がい福祉サービスに位置づけられているため、ほかの障がい福祉サービスと同様に、サービス提供費用の一部を利用者が負担する考え方(応能負担)が適用されるのが一般的です。
働いているとはいえ、A型事業所での就労は訓練や支援を含むサービス提供の一環です。そのため、費用の一部を利用者が負担する仕組みとなります。
ただし、事業者によっては減免届出を行い、利用料を事業者が肩代わりするケースもあります。
月ごとの負担上限額
就労継続支援A型を含む障がい福祉サービスでは、利用者の負担が過重にならないように、月ごとの負担上限額が設定されています。上限額は、前年の世帯収入に応じて決まります。
具体的な上限額は、下記のとおりです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 ※3人世帯で障がい者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割16万円未満) ※収入がおおむね670万円以下の世帯が対象 ※入所施設利用者(20歳以上)・グループホーム利用者は市町村民税課税世帯の場合、一般2となる | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
上限額に満たない利用であれば実費負担、超えた場合でも上限以上の請求はされません。収入区分は、前年の世帯課税状況をもとに判断されます。
就労継続支援A型の利用料の計算方法と世帯収入の区分
就労継続支援A型の利用料は、下記の計算方法で決まります。
月額利用料=1日の自己負担額(サービス費用の原則1割)×利用日数 |
計算の結果と上限額を比較し、低い方の金額を支払う流れとなります。上限を超えて請求されることはありません。
生活保護世帯や市町村民税非課税世帯であれば、利用料が0円になるケースもあります。この仕組みによって、無理なく福祉サービスを受けられるのが特徴です。
続いて、下記の内容について詳しく解説します。
・世帯の範囲
・具体的な計算例
・就労継続支援A型が無料になるケース
それぞれ見ていきましょう。
世帯の範囲
利用料を判断する世帯とは、18歳以上の利用者の場合、基本的に下記のとおりに定義されます。
種別 | 世帯の範囲 |
---|---|
18歳以上の障がい者 (施設入所者を除く) | 利用者本人+配偶者 |
障がい児 (施設に入所する18~19歳を含む) | 保護者を含む住民基本台帳上の世帯 |
親や兄弟と同居していても、18歳以上の場合は親族の収入は対象外です。
具体的な計算例
世帯収入ごとの実際の計算例を、下表にまとめました。
世帯収入 | 240万円 | 580万円 | 890万円 |
---|---|---|---|
区分 | 低所得 | 一般1 | 一般2 |
上限月額 | 0円 | 9,300円 | 37,200円 |
自己負担額(例) | 850円/日 | 600円/日 | 750円/日 |
利用日数 | 14日 | 20日 | 18日 |
実際の支払額 | 0円 | 9,300円(上限適用) | 13,500円 |
このように、就労日数が多くても、収入区分によって実際に支払う金額は変動します。
また、実際の利用料は事業所の加算状況やサービス内容によって上下する場合があります。通所を検討する際は、必ず見学や事前相談を行い、1日の自己負担額や提供サービスの内容を確認しましょう。
就労継続支援A型が無料になるケース
就労継続支援A型は、前年度の所得によって利用料が無料になるケースがあります。具体的には、下記の条件を満たす場合です。
区分 | 条件 |
---|---|
生活保護世帯 | 生活保護を受給している |
低所得世帯 | 本人と配偶者が市町村民税非課税 |
減免実施事業所 | 雇用関係があり、かつ事業所が減免届出済 |
利用者負担減免事業実施要綱にもとづき、雇用契約を結んでいる利用者に対して、事業所が利用料を全額負担する場合があります。制度の実施条件は、下記のとおりです。
・事業所が都道府県に減免措置実施届出を提出
・ 雇用者全員に同一の減免措置を適用(個別対応は不可)
対象者全員に平等に適用され、個別の判断で減免内容は変えられません。減免の有無は事業所によって異なるため、事前に確認しましょう。
条件を満たせば、一般世帯の方でも利用料が無料になる場合があります。
参考:厚生労働省|就労継続支援A型事業における利用者負担減免事業実施要綱について
就労継続支援A型の利用料以外に発生する費用
就労継続支援A型事業所の利用にあたっては、利用料以外に下記の費用が発生する可能性があります。
・交通費
・昼食代
・ その他
実際にかかる費用と、軽減措置について解説します。
交通費
通所にかかる交通費は、原則自己負担です。しかし、事業所によっては、一部または全額を支給する場合があります。
支給方法は、下記のとおりです。
・一律支給・実費精算・上限付きなど事業所により異なる
・一部の事業所では無料送迎サービスを実施している
また、公共交通機関の障がい者割引や、自治体の交通費助成制度も利用可能です。千葉県浦安市では、下記の助成制度を提供しています。
・公共交通機関:1ヶ月あたり最大5,000円助成(通所往復2km以上)
・自転車利用:1ヶ月あたり1,000円(条件あり)
住まいの自治体によっては、交通費助成制度が提供している場合があるため、事前に確認しましょう。
昼食代
就労継続支援A型事業所では、昼食を下記の方法でとることが一般的です。
・持参
・購入
・事業所提供
昼食代も原則自己負担です。しかし、事業所によっては、弁当の提供や昼食支給制度が用意されています。
厚生労働省によると、低所得世帯や一般1区分の方は、食費の減免措置(補足給付)の対象となる場合があります。適用されると食材料費のみとなるため、実際にかかる額のおおよそ3分の1の負担となるでしょう。
月22日利用の場合、5,100円程度です。食材料費は、施設ごとに額が設定されます。利用前に、昼食の提供有無や費用を事業所に確認しておくと安心です。
その他
交通費・食費以外にも、就労継続支援A型の利用には、下記の費用が発生する場合があるため注意が必要です。
費用の種類 | 相場 |
---|---|
作業着・制服代 | 数千円程度 |
診断書費用 | 3,000〜5,000円 |
文具・道具代 | – |
障がい者手帳を持たない方が利用申請する場合、医師の診断書が必要となります。これらの費用は、事業所によって支給・貸与・一部負担と対応が異なります。
事前に確認しておけば、思わぬ出費を避けられるでしょう。
就労継続支援A型の利用料に関する相談先
就労継続支援A型の利用料や減免制度などの相談窓口は、下記のとおりです。
相談先 | 相談できる内容 |
---|---|
市区町村の障害福祉担当窓口 | 制度の詳細 負担区分の判定 公的な助成制度(交通費助成など) |
指定特定相談支援事業所 | サービス利用計画の作成とあわせて、利用料を含む費用面の相談も可能 |
利用を検討している就労継続支援A型事業所 | 事業所独自の1日の自己負担額 交通費や昼食代の扱い 利用料の減免措置(事業者負担)の有無など |
身近な相談窓口を活用し、自分に合った支援制度を無理なく受けましょう。
就労継続支援A型事業所の役割・特徴
就労継続支援A型は、障がいや病気により一般企業での就労が難しい方を対象とした、雇用型の福祉サービスです。
利用者は就労継続支援A型事業所と雇用契約を結び、原則、最低賃金以上の給与を受け取りながら働きます。最低賃金以上の給与が保証され、社会保険や労働関連法規も適用されます。
働く場を提供するだけでなく、働きながら一般就労に必要な知識や能力、社会的スキルを高めるための訓練や支援を同時に行うのが特徴です。業務は軽作業や製造補助、データ入力などさまざまです。
就労機会の提供と職業訓練を通じて、利用者の自立と最終的な一般就労への移行をサポートするのが、就労継続支援A型事業所の役割といえます。
以下では、利用対象者の条件・就労継続支援B型との違いを解説します。
利用対象者の条件
就労継続支援A型の利用条件や期間を、下表にまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
対象者の障がい種別 | 精神障がい 発達障がい 知的障がい 身体障がい 難病(厚労省指定の対象疾患) |
年齢制限 | 利用開始時点で65歳未満 ※条件を満たせば65歳以降も継続利用可能 |
就労歴の要件 | 就労移行支援事業を利用したが、一般企業への就職に至らなかった方 特別支援学校を卒業後、就職活動を行ったが雇用に結びつかなかった方 一般企業での就労経験があるが、現在は雇用されていない方(離職中など) |
参考:厚生労働省|障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス
原則、雇用契約を締結するため、最低賃金以上の給与が支払われます。状況によっては、一定の範囲で障がい者以外の雇用も可能です。
就労継続支援A型は、原則、利用期間の制限はありません。そのため、本人の状態や目標に応じて、長期間にわたり通所し続けられます。
就労継続支援B型との違い
両者の大きな違いは、雇用契約を結ぶかどうかです。就労継続支援A型は雇用契約を結び、最低賃金以上が保証されます。
一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばず、仕事の対価に工賃が支払われます。工賃は、最低賃金を下回ることが多い傾向です。
そのため、就労継続支援B型は雇用契約にもとづいた就労が難しい方や、自分の体調を優先しながら作業を行いたい方に適しています。
就労継続支援A型は、一般就労に近い働き方を目指すサービスといえるでしょう。
就労継続支援A型の利用料について理解し、賢く制度を活用しよう
就労継続支援A型の利用料は、原則1割負担ながら所得に応じた上限額があるため、多くの方が無料または低額で利用可能です。利用料以外の費用も含めて把握し、必要に応じて助成制度や減免措置を活用すれば、無理なくサービスを利用できます。
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