
就労継続支援A型のデメリットとは?やめとけといわれる理由と対策

就労継続支援A型を検討する中で「デメリットが多い」「やめとけ」と耳にしたことはありませんか?障がいがあっても働きたいと思いながらも、A型事業所への不安を感じている方は少なくないでしょう。たしかに就労継続支援A型には厳しい現実もありますが、上手に活用すれば自分らしく働ける可能性が広がります。
本記事では、就労継続支援A型のメリットとデメリットを整理し、自分らしく働くためのポイントを分かりやすく紹介します。ぜひ参考にして、あなたに合った働き方を見つける手がかりにしてください。
就労継続支援A型のメリット・デメリット
就労継続支援A型を利用する前に、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。自分に合った選択をするため、以下の特徴を参考にしてください。
メリット | デメリット |
---|---|
・最低賃金が保証される ・社会とのつながり ・生活リズムの安定 実務経験を積みスキルアップできる可能性 ・利用期間には決まりがない ・障がい特性に合わせた配慮が受けられる | ・一般就労を目指す訓練が少ない場合がある ・週3~5日通う必要があるため休みがちだと継続が難しい ・給料が少なく生活できない場合がある ・事業所の経営リスク |
詳しく見ていきましょう。
就労継続支援A型のメリット
就労継続支援A型には、働くうえで安心感を得られる点が多くあります。ここでは以下の5つを紹介し、それぞれの特徴や注意点を確認しましょう。
・最低賃金が保証される
・社会とのつながり・生活リズムの安定
・実務経験を積みスキルアップできる可能性
・利用期間には決まりがない
・障がい特性に合わせた配慮が受けられる
これらを把握することで、A型事業所の魅力がより明確になります。
最低賃金が保証される
就労継続支援A型では、利用者と事業所が雇用契約を結ぶため、原則として最低賃金が保証されます。これはB型やそのほかの工賃制の福祉サービスと大きく異なる特徴です。最低賃金が保証されることで、一定の収入を得つつ社会保険にも加入できる可能性が高まり、経済的な安定を得やすい点が魅力です。
ただし、勤務時間が短い場合は月々の手取り額が少なくなることも。また、地域によって最低賃金額が異なるため、住むエリアの賃金水準も確認が必要です。
社会とのつながり・生活リズムの安定
A型事業所に通うことで、日々の生活リズムが整いやすくなるメリットがあります。週3日以上の定期的な出勤が求められる場合が多いため、朝起きて身支度を整え、決められた時間に通所する習慣が身につきやすいです。
加えて、スタッフやほかの利用者との交流を通じて社会とのつながりを感じられるのも利点です。家庭や1人暮らしで孤立しやすい方にとって、仲間とともに働くことで精神面の安定が期待できます。
実務経験を積みスキルアップできる可能性
就労継続支援A型では、事業所によって一般就労に近い業務を体験できる場合があります。事務作業や接客、製造やIT関連などさまざまな職種が存在するため、得意分野や興味のある分野で実務経験を積めるチャンスがあります。実際の職場環境に近い作業を行うことで、社会人としての基本スキルやビジネスマナーを身につけやすくなる点がメリットです。
一方、事業所によっては単調な作業が中心で、想定していたほどスキルが伸ばせないケースもあり、仕事内容をよく確認することが大切です。将来の目標や長所を意識しながら働くことで、ステップアップにつながりやすくなります。
利用期間には決まりがない
就労移行支援には原則2年間という利用期限が設けられていますが、A型事業所の場合はこのような決まりがありません。自分のペースで長期的に働き続けられるため、体調の波がある方や、ゆっくり仕事に慣れていきたい方には大きな安心感があります。また、利用開始から時間をかけて職場環境や仕事内容に適応し、徐々に勤務日数や時間を増やすことも可能です。
ただし、長期間同じ事業所に通うことで、一般就労への意欲が下がりやすい面も指摘されています。利用期間に自由度がある分、自分自身の目標や将来設計を定期的に見直すことが大切です。
障がい特性に合わせた配慮が受けられる
就労継続支援A型では、障がい特性に合わせた働き方の調整を受けやすい点が特徴です。たとえば、身体障がいがある方のために椅子の高さや机の配置を工夫するなど、事業所ではさまざまな配慮が行われています。
スタッフが定期的に面談を行い、利用者の体調や仕事量をこまめに確認する事例もあります。これにより、無理なく働き続けられるだけでなく、自分の障がい特性を前向きにとらえられるようになることも期待できます。ただし、こうしたサポートの充実度やコミュニケーション体制は事業所によって差があるため、事前の見学や体験で雰囲気を確かめることが重要です。
就労継続支援A型のデメリット
就労継続支援A型には大きな魅力がある一方で、利用を検討する際に注意したい点も存在します。ここでは以下4つについて触れ、具体的な内容を解説します。
・一般就労を目指す訓練が少ない場合がある
・週3~5日通う必要があるため休みがちだと継続が難しい
・給料が少なく生活できない場合がある
・事業所の経営リスク
これらを理解しておけば、デメリットを最小限に抑えられるでしょう。
一般就労を目指す訓練が少ない場合がある
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働きながら社会とのつながりを得られる反面、一般就労を目指すためのスキルアップ訓練が十分でない事業所も存在します。たとえば、実際の職場に近い研修や就職活動のサポートがあまり行われず、決まった作業のみを繰り返すケースも。
その場合、利用者が「次のステップとして一般企業で働きたい」という目標を抱いていても、長期的なキャリア形成が難しくなる可能性があります。したがって、事業所を選ぶ際には具体的な訓練内容や、利用者がどれほど就労移行を視野に入れているかを確認することが大切です。
週3~5日通う必要があるため休みがちだと継続が難しい
A型事業所では、週3日以上の出勤を条件にしている場合が多く、最低賃金を受け取る以上は契約に基づいて働く責任が生じます。体調の波が激しい方や、通院の予定が頻繁に入る方にとっては、定期的に出勤することが大きな負担となりかねません。
結果、安定的に通えないことで雇用継続が難しくなる可能性があります。事前に相談し、通院日や体調管理について理解を得ておくことで無理のない働き方が見つかる場合もあるため、早めのコミュニケーションが大切です。
給料が少なく生活できない場合がある
就労継続支援A型は最低賃金が保証される点が強みですが、それでも勤務時間の長さや地域の賃金水準によっては十分な収入を得られない場合があります。家賃や食費、通院費などを考慮すると、フルタイムで働けない方にとっては生活を維持するのが厳しくなる可能性が高まるでしょう。さらに、障がい年金や生活保護を受給している方が働き始めると、支給額が減少するケースもあり、結果的に手取りが想定より少なくなることも。
こうした経済的なリスクを回避するには、事前に収支シミュレーションを行い、家族や支援員とも十分に話し合うことが大切です。必要に応じてほかの福祉サービスを併用するなど、複数の選択肢を検討すると安心です。
事業所の経営リスク
A型事業所は国や自治体の助成金に依存している面があるため、報酬制度や補助金の見直しによっては経営が厳しくなる場合があります。経営リスクは見えにくい部分ですが、事業所の運営状況や職員の数、利用者の定着率などを確認しておくと、ある程度の判断材料になります。
契約時に「もし閉鎖になった場合のサポート体制はどうなっているか」を質問しておくことも大切です。こうした事前のチェックによって、急なトラブルを回避しやすくなるでしょう。
就労継続支援A型はどんな人に向いている?
就労継続支援A型の利用を検討する際、自分に合っているかどうかを判断することが大切です。A型事業所は万人に向いているわけではなく、特定の条件や状況の方に適した就労形態といえます。
向いている人 | 向いていない人 |
---|---|
・安定した働き方を求めている ・一般就労の経験があるが体調などの理由で継続が難しい ・最低賃金程度の収入+障がい年金などで生活できる ・ある程度の作業能力がある ・障がい特性に合った環境で働きたい | ・高い収入を第一に考えている ・体調の波が大きく週3日以上の通所が難しい ・指示に従うことが極めて困難 ・すぐに一般就労を目指している ・専門的なスキルを持ち高い能力を生かしたい |
障がい年金を受給している方や家族のサポートがある方にとって、A型事業所は「無理なく働きながら社会参加する」という点で大きなメリットがあります。また、就労継続支援A型は「働く場所」と「福祉サービス」の両面を持っているため、配慮が必要な障がい特性があっても理解が得られやすい環境です。
就労継続支援A型を最大限活用するための5つのコツ
就労継続支援A型での働き方をより有意義にするため、いくつかのポイントを意識することが大切です。ここでは、以下5つを具体的に解説します。
・複数の収入源を確保する
・スキルアップの機会を自ら作る
・同じ立場の仲間とのネットワークを作る
・障がい者雇用(一般就労)へのチャレンジ
・将来の選択肢を常に意識する
自分の状況や目標に合わせて工夫することで、A型事業所での経験をより充実したものにできるでしょう。
複数の収入源を確保する(障がい年金との併用など)
就労継続支援A型では最低賃金が保証されるとはいえ、勤務日数や時間に制限があると収入面で物足りなさを感じる場合もあります。そこで大切なのは、障がい年金などの公的給付と併用することです。障がい年金を受給しながら働くことで、生活費を補填しつつ社会復帰の足がかりを作りやすくなります。
また、勤務時間を増やすことが難しい方は、在宅ワークや副業といった形で収入源を複数に分散させるのも1つの手です。事業所のスタッフや専門家に相談しながら収支バランスを整える工夫を意識すると、経済的な不安を軽減しながら就労を続けやすくなるでしょう。
スキルアップの機会を自ら作る
A型事業所によっては、日々の作業が単調に感じられることもありますが、自発的に学習機会を増やすことでスキルアップの可能性を広げられます。たとえば、パソコン操作が苦手であれば無料のオンライン講座を活用する、興味のある資格試験に挑戦してみるなど、事業所の仕事と並行して自己研鑽に取り組む方法です。
職員や支援員に「より専門的な業務にチャレンジしたい」と相談してみるのも有効で、実務を通じて成長するチャンスを得られる場合もあります。こうした姿勢が、将来的に一般企業で働く際の大きな強みにもつながるでしょう。
同じ立場の仲間とのネットワークを作る
就労継続支援A型を利用している方の中には、同じ障がいや似たような境遇を持つ人も多く、悩みを共有し合える仲間に出会える可能性があります。お互いの情報交換をするうちに、利用に関する知識や生活面の工夫など、働くうえで役立つアドバイスを得られるでしょう。
また、職場だけではなくオンラインコミュニティや地域のサポート団体などに顔を出してみると、さらに多様なつながりが築きやすくなります。仲間がいると気軽に相談できる場も増え、気持ちが前向きになりやすい点が大きなメリットです。
障がい者雇用(一般就労)へのチャレンジ
A型事業所は、雇用契約がありながら障がい特性に応じた配慮が得られる一方、一般企業での働き方とは異なる面もあります。将来的に障がい者雇用として一般就労を目指す場合、A型で働きながらも就職活動の準備を並行して進めるとよいでしょう。具体的には、職業訓練や就労移行支援を活用し、ビジネスマナーや履歴書の書き方など基本的なスキルを磨く方法があります。
さらに、インターンや職場体験に参加してみることで、自分に合う業種・職種を見極めやすくなるはずです。A型を足がかりに、より幅広い働き方を検討することで、選択肢を拡大できます。
将来の選択肢を常に意識する
就労継続支援A型のメリットを生かしながら働いていると、安定感がある分だけ安心して長く通い続ける人も少なくありません。しかし、その一方で一般就労への挑戦やステップアップを意識しなくなるというケースも見受けられます。
自分の障がい特性や体調と相談しながら、いつかは別の働き方に移行したい、あるいは専門性を高めたいと考えているのであれば、定期的に目標を振り返る時間を持ちましょう。
まとめ:就労継続支援A型を上手に活用して自分らしい働き方を
就労継続支援A型には最低賃金の保証や障がい特性への配慮といったメリットがある一方で、収入面の制約や事業所の経営リスクなどの課題もあります。大切なのは自分に合った事業所を選び、その環境を最大限に生かすことです。
岐阜市の就労継続支援A型・相談支援センターのTFFでは「働くよろこび」を大切に、1人ひとりの特性に合わせた支援を行っています。野菜作りや菌床栽培など、自然と触れ合いながら充実した就労体験ができる環境を整えていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。就労継続支援A型で自分らしい働き方を見つけていきましょう。