
就労継続支援A型だけでは生活できない?収入や制度活用を解説

就労継続支援A型だけでは生活できないと感じている方は、少なくありません。収入が安定せず、将来に不安を抱えている場合もあるでしょう。しかし、適切な制度や支援を活用することで、より安心できる働き方を目指せます。
本記事では、就労継続支援A型の特徴やメリット・デメリット、さらに収入面を補うための具体的な方法を解説します。選択肢を知り、自分に合った道を探るきっかけになれば幸いです。
就労継続支援A型の特徴やメリット・デメリット
就労継続支援A型は、障がいのある方が雇用契約を結んで働ける場として注目されています。しかし、利用を検討する際にはよい面だけでなく、注意すべき点も把握することが大切です。ここでは、以下の4つを説明します。
・就労継続支援A型とは?
・就労継続支援A型とは?
・就労継続支援A型事業所の仕組みや仕事内容
・就労継続支援A型のメリット
・就労継続支援A型のデメリット
それぞれの概要を理解し、最適な働き方を見つけるきっかけにしてください。
就労継続支援A型とは?
就労継続支援A型は、障がいのある方を対象に企業と同様の雇用契約を結んで給与を受け取りながら働く仕組みです。一般的な職場よりも配慮が多いことが特徴で、短時間勤務や定期的な面談などを通じて無理のない働き方が可能になります。
また、利用者の障がい特性に合わせて作業内容を調整し、支援員が日常生活のアドバイスを行う場合も少なくありません。これにより、職場定着率が高まりやすく、将来的に一般就労へ移行するステップとしても重宝されています。ただし、各事業所によって仕事内容やサポート内容が異なるため、見学や相談を通じて自分の希望に合うかを確認することが大切です。
就労継続支援A型事業所の仕組みや仕事内容
A型事業所では、利用者が雇用契約を結ぶため最低賃金以上が保証されるのが大きな特徴です。具体的な仕事内容としては、軽作業や清掃、食品加工、事務サポートなど多岐にわたります。利用者1人ひとりの障がい特性や体調に合わせて業務が調整されるケースも多いため、一般企業で働くことに不安がある方でも取り組みやすいでしょう。
さらに、職業指導員や生活支援員が常駐している事業所が多く、仕事だけでなく日常生活の困り事についても相談しやすい環境が整っています。
就労継続支援A型のメリット
就労継続支援A型事業所の最大のメリットは、障がいがあっても安定した雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を得られる点です。体調や障がい特性に配慮しながら働けるので、長期的な就労を実現しやすいことも利点といえます。また、職業指導員や支援員が常にサポートしてくれるため、困り事があっても相談しやすい環境が整っています。
さらに、将来的に一般就労を目指す場合にも、実際の勤務経験や生活習慣の安定を積む場として役立つでしょう。業務内容も多様で、事務系から軽作業まで幅広い選択肢があるため、自分の能力や興味に合わせて経験を積みやすいのもメリットの1つです。
就労継続支援A型のデメリット
一方、A型事業所にはいくつかのデメリットも存在します。まず、最低賃金以上が保証されるとはいえ、短時間勤務などの影響で収入が十分でないケースが多いことです。また、助成金制度や行政の報酬改定によって事業所の経営状況が変わり、閉鎖や人員整理が行われるリスクもゼロではありません。
さらに、利用者同士やスタッフとのコミュニケーションがうまくいかず、人間関係でストレスを感じることもあるでしょう。事業所によって支援体制や運営方針に差があるため、サービスの質がまちまちである点も懸念の1つです。選択する際には、見学や面談を重ねて、自分に合うか冷静に判断する必要があります。
就労継続支援A型では生活できないといわれる理由
就労継続支援A型は最低賃金が適用される一方で、収入が十分に確保できず「生活が難しい」と感じる利用者も多いようです。そこで、以下2つの理由を確認してみましょう。
・給料の実態・最低賃金の適用範囲
・収入が低いおもな理由
状況を正しく理解すると、適切な対策や制度の活用が見えてきます。
給料の実態・最低賃金の適用範囲
厚生労働省「令和5年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援A型事業所の平均賃金は月額8万6,752円と報告されています。A型では雇用契約を結ぶため最低賃金以上の支給が原則ですが、フルタイム勤務ではないケースも多く、結果的に生活費をまかなえない場合もあるのが実情です。
地域差もあり、都市部や地方などの経済環境によって平均金額に差が出ます。こうした背景を踏まえると、単に「最低賃金以上だから安心」とはいい切れず、事業所の運営状況や自分の勤務スタイルを総合的に見極めることが重要といえます。
収入が低いおもな理由
就労継続支援A型で十分な収入を得られない原因として、短時間勤務やシフト制が採用されやすいことがあげられます。利用者の体調や障がい特性に配慮して時間を調整するため、結果的に勤務時間が少なくなり、月給も伸び悩みやすいです。また、事業所の経営体力や支援体制によっては、高付加価値の作業や業務を確保できず、賃金水準が上がりにくいケースも。
加えて、助成金の見直しや報酬改定があると、経営が不安定になりやすく、給料アップにつながる施策を講じにくいのも実情です。こうした要因が重なることで、A型事業所だけの収入では生活が苦しくなる利用者が少なくないのが現状といえます。
就労継続支援A型で生活できない状況をどう対策する?
就労継続支援A型の収入だけでは、家賃や生活費をまかなうのが難しい場合もあります。しかし、公的制度の活用や副業の検討、家族の援助など、対策の選択肢はいくつか存在します。ここでは、以下の5つを解説します。
・就労継続支援A型の給料だけでは厳しい現実
・障がい年金の活用
・生活保護との併用
・ダブルワーク・副業の可否
・家族支援やグループホーム・他の福祉サービス
自分に合う方法を知ることで、生活の安定につながる可能性があります。
就労継続支援A型の給料だけでは厳しい現実
就労継続支援A型は最低賃金が保証されるものの、実際にはフルタイム勤務が難しく、短時間シフトで働くケースが少なくありません。利用者の体調や障がい特性に合わせた勤務スタイルになりやすく、結果として月収が十分に確保できない状況が生じるのです。
また、令和5年度の資料では平均賃金が8万円台という報告もあるため、住居費や光熱費、食費などをまかなうには厳しい水準といえます。さらに、経営上の理由で昇給が期待しにくい事業所もあり、収入増を望むのが難しい現実があります。そのため、A型で働きながら生活費を補う手段を探すことが肝要です。
障がい年金の活用
障がい年金は、障がいがある方の収入面を支える制度です。就労継続支援A型の利用者でも一定の障がい状態に該当すれば、就労中であっても年金を受給できる可能性があります。とくに収入が低いために生活が成り立たない状況の方にとっては、大きなサポートとなるでしょう。
ただし、申請にあたっては医師の診断書が必要で、等級の判断や手続きの進め方に時間がかかる点に留意が必要です。加えて、年金を受給できる等級が変わると支給額も変動する場合があります。事業所や支援機関と相談しながら、書類の準備や窓口対応を進めるとスムーズに申請を行いやすいでしょう。
生活保護との併用
収入が極端に低い場合や、家族からのサポートが難しい場合には、生活保護との併用も検討できます。生活保護は最低限度の生活を保障する制度であり、就労継続支援A型の給与だけでは足りない分を補う仕組みです。ただし、保護費は収入に応じて減額されるため、全額受給できるわけではありません。
また、資産状況や家族構成などの要件を満たし、自治体の審査を通過する必要があります。利用開始後は定期的に就労状況を報告する義務があるなど、一定の制限も伴う点に注意が必要です。
ダブルワーク・副業の可否
A型事業所の給料だけでは生活が苦しい場合、副業やダブルワークで収入を増やす手段もあります。ただし、自治体や事業所によって規定が異なるため、無断で副業を行うと契約違反となり、最悪の場合クビや利用停止につながるリスクもあります。そのため、まずは事業所と相談し、ダブルワークが認められるかを確認しましょう。
また、副業を開始する際には労働時間や体調管理にも注意が必要で、過度に負担をかけると本業にも支障をきたすおそれがあります。
家族支援やグループホーム・他の福祉サービス
家族にサポートを受けられる状況であれば、家計の一部を補ってもらうことで精神的にも安定した状態を保ちやすくなります。実家暮らしを選ぶことで住居費を削減し、食費を軽減するなどの工夫も可能です。
一方で、家族の負担が大きくならないように、家族会議や支援機関を交えた話し合いが必要となるでしょう。また、グループホームに入居することで手厚いサポートを受けながら生活コストを抑える方法もあります。ほかにも就労移行支援などのサービスを併用し、将来的に一般就労へステップアップしていく道も検討する価値があります。自分に合った支援の組み合わせを見つけることが、生活の安定につながるはずです。
就労継続支援A型事業所を選ぶポイントとトラブル対策
就労継続支援A型に通いたいと考える際、事業所の選び方や自分との相性を見極めることが大切です。そこで、以下3つを確認しましょう。
・向いている人・向かない人
・事業所選びのポイント
・人間関係・クビなどのリスク
詳しく解説します。
向いている人・向かない人
就労継続支援A型は、障がいのある方が雇用契約のもとで働く仕組みです。自分のペースで働きながら収入を得たい人や、サポートを受けつつ徐々に就労経験を積みたい人にはとくに向いています。また、週3~5日程度の安定した通所が可能な方や、人と関わる仕事に抵抗が少ない方にも適した環境といえるでしょう。
一方で、高収入を目指したい、すぐにフルタイム勤務で働きたいと考える方には物足りなさを感じる場合があります。さらに、人間関係が苦手で極力1人で働きたい方も、事業所内でのコミュニケーションにストレスを感じるかもしれません。
事業所選びのポイント
就労継続支援A型事業所を選ぶ際は、「雇用保険や社会保険への加入状況」をチェックしましょう。事業所によっては保険制度が整っていない場合もあるため、長期的な働き方を考えるうえで大きなポイントになります。
次に「仕事内容」と「勤務時間帯」も確認が必要です。自分の障がい特性や体調と無理なく両立できる内容かを事前に把握しましょう。また、「就労後のフォロー体制」や「一般就労への移行サポート」など、将来を見据えた支援があるかどうかも調べると安心です。
人間関係・クビなどのリスク
A型事業所はサポート体制が充実している反面、利用者同士やスタッフとのコミュニケーションが欠かせないため、人間関係のトラブルが起こる可能性もあります。たとえば、作業手順や出勤態度に関する意見の食い違いが積み重なると、職場内の雰囲気が悪化してしまう場合があります。
また、体調不良や無断欠勤が続くと、事業所側から雇用契約を打ち切られるケースもゼロではありません。こうしたリスクを回避するためには、こまめな情報共有や、困り事があれば早めにスタッフへ相談する姿勢が大切です。
万が一クビや退職を余儀なくされた場合でも、すぐに他の支援機関やハローワークなどと連携を図り、次へつなげるよう意識しておきましょう。
一般就労へのステップアップ、将来のキャリア形成とは
就労継続支援A型をきっかけに、最終的には一般就労で働きたいと考えている方も多いでしょう。しかし、具体的な進路やスキルアップの方法が分からず、迷いが生じることもあるかもしれません。ここでは、以下5つを紹介します。
・A型事業所での経験を生かした一般就労への移行
・障がい者雇用枠での就職を目指す方法
・スキルアップのための訓練や資格取得
・就労移行支援事業所の活用方法
・在宅ワークや自営業の可能性
自分に合ったキャリアプランを見つけ、将来の選択肢を広げていきましょう。
A型事業所での経験を生かした一般就労への移行
就労継続支援A型での勤務経験は、一般就労への大きなステップとなる可能性があります。実際の職場環境で働くことで、社会人としての基本的なマナーやコミュニケーションスキルを身につけられるからです。また、サポート体制が整った状態で業務に取り組むため、徐々に自分のペースをつかみながら働ける点もメリットといえます。
実務に慣れてきたら、事業所スタッフや支援機関と相談して、一般企業へ応募するタイミングを探ってみましょう。A型事業所で培った経験を強みに、より広い職種や勤務形態を視野に入れることが大切です。
障がい者雇用枠での就職を目指す方法
障がい者雇用枠を活用することで、障がい特性を考慮しながら働ける企業に就職できるチャンスが広がります。まずは、ハローワークの障がい者専門窓口や各種就労支援機関に相談し、自分の希望や適性に合った企業情報を収集しましょう。
また、面接時には配慮してほしい点や、これまでの就労経験で身につけたスキルを具体的に伝えると企業側も受け入れやすくなります。採用後の職場定着を考慮して、必要に応じた支援やフォローアップ制度が整った企業を選ぶと、長期的に安心して働き続けられる場合が多いです。
スキルアップのための訓練や資格取得
より安定した一般就労を目指すには、専門的なスキルや資格を身につけることも有効です。たとえば、パソコン操作が苦手な方であれば、基礎的なOfficeソフトの使い方を学習するだけでも職種の選択肢が広がります。調理や製造業に興味があれば、専門のスクールや訓練施設で基礎から学べるプログラムを活用するのも一案です。
資格取得を目指す場合は、自分の興味や将来の方向性に合ったものを選ぶのがポイントといえます。こうした取り組みを通じて自信をつけることで、面接や職場においても積極的にアピールできるでしょう。
就労移行支援事業所の活用方法
就労移行支援事業所は、障がいのある方が一般企業に就職するためのサポートを行う機関です。A型事業所で一定の経験を積んだあと、さらなるキャリアアップを目指す際にも活用できます。事業所では、ビジネスマナー研修や職場体験、面接練習など、多岐にわたる支援プログラムを受けられるのが特徴です。
また、就職が決まったあとも職場定着をサポートしてくれる事業所が多く、トラブルや不安があっても相談しやすい環境です。そうした継続的なフォローがある点が、就労移行支援の大きな魅力といえます。
在宅ワークや自営業の可能性
近年では、在宅ワークやフリーランスといった働き方も注目されています。障がいの特性上、通勤が難しい方や職場での人間関係に不安がある方にとっては、自宅で仕事ができる在宅ワークは大きな選択肢になるでしょう。また、自分の得意分野やスキルを生かして自営業を始める方法もあります。
たとえば、パソコンを使ったデザインやプログラミング、ネットショップ運営など、オンラインで完結する業務が広がっています。ただし、安定収入を得るには営業力や自己管理能力が必要な点に留意しましょう。もし在宅ワークや自営業を検討する場合は、支援機関や専門家に相談しながら、段階的に準備を進めると安心です。
まとめ:就労継続支援A型だけで生活できなくても選択肢はある
就労継続支援A型だけでは生活が成り立たないと感じても、選択肢は1つではありません。制度を上手に組み合わせれば、安定した収入と暮らしを目指せます。
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