
就労継続支援A型の給料はいくら?平均額や生活できるか解説

就労継続支援A型事業所で働くことを検討している方にとって、「どれくらいの給料がもらえるのか」はもっとも気になる点ではないでしょうか。障がい年金と合わせるとどうなるのか、1人暮らしは可能なのかなど、さまざまな不安や疑問があると思います。
本記事では、就労継続支援A型の平均給料や地域による違いや生活費とのバランス、給料を補完する制度などを、解説します。事業所の見極め方にも触れているので、自分に合った働き方や生活設計を考えるきっかけにしてください。
就労継続支援A型の平均給料
就労継続支援A型事業所は、障がいのある方に雇用契約に基づく就労の機会を提供する福祉サービスです。令和5年度に厚生労働省が実施した調査では、全国4,388事業所からの報告を集計した結果が公表されました。
A型事業所においては、利用者に支払われる「給料」に、工賃や賃金・給与・手当・賞与など、名称を問わず事業者が支払うすべての金額が含まれます。給料には最低賃金法が適用されるため、地域ごとに定められた最低賃金以上を支払うことが原則です。また、一般企業と同等の法的保護が適用される仕組みになっています。
全国平均月給は約86,752円(対前年比:103.8%)
厚生労働省が公表した令和5年度の調査結果によると、就労継続支援A型事業所の全国平均月給は8万6,752円となり、前年度の8万3,551円から3,201円増加しました(対前年比103.8%)。
過去からの推移を見ると、平成24年度は6万8,691円でしたが、12年間で約1万8,000円の上昇を記録。とくに注目すべきは、継続的な上昇傾向にあることで、ここ数年は毎年2,000〜3,000円程度の増加が続いています。
この堅調な上昇は、最低賃金の引き上げや障がい者福祉政策の充実、A型事業所の運営改善などが要因と考えられます。ただし、この金額はあくまで平均値で、実際には事業所ごとに大きな差があることに注意が必要です。
地域別・業種別の給料の違い
就労継続支援A型事業所の給料は地域によって大きく異なります。令和5年度の都道府県別データを見ると、もっとも高いのは東京都の10万6,498円で、全国平均を約2万円上回っています。次いで島根県(10万3,724円)、広島県(10万2,410円)、和歌山県(99,352円)、高知県(99,123円)。一方、もっとも低いのは宮崎県の74,967円で、全国平均より約1万2,000円低くなっています。
この地域差は、地域の最低賃金の違いや産業構造の違いが影響しています。同じ地域内でも事業所による差が大きいため、事業所選びの際には給料体系を確認することが重要です。
時間額の実績(平均工賃額:1,080円)
大阪府の最新調査によると、平均工賃額は約1,080円です。これは支払い総額を作業時間全体で割り出す方法で算出され、短時間勤務でも最低賃金を下回らないかを判断しやすい点が特徴といえます。
ただし、業種や事業所ごとの作業内容によって時給に差が出る場合もあり、専門性の高い職種ほど賃金が上昇しやすい傾向があります。就労継続支援A型を利用する際は、月給と合わせて時間額を確認し、自身の通院や家庭の事情などに合わせて働き方を選べるかを見極めることが大切です。
就労継続支援A型の給料と生活の実現
就労継続支援A型事業所からの給料で実際に生活していくには、いくつかの課題があります。以下の3つの観点から、A型事業所の給料と生活の実現可能性について考えましょう。
・給料だけでは生活できるか
・併用できる経済的支援制度
・給料を増やす方法
実際の生活設計には、これらの要素を組み合わせた総合的な視点が必要です。
就労継続支援A型の給料だけでは生活できない?
就労継続支援A型事業所の平均月給約86,752円は、一般企業の給料と比べると低い水準にあります。この金額だけで生活することは、とくに都市部では困難な場合が多いでしょう。生活形態によって必要な費用は大きく異なるため、以下の2つのケースについて考えてみます。
・1人暮らしの場合
・家族と同居の場合
どちらの場合も、障がい年金などほかの収入源との組み合わせを検討することが、現実的な選択となるでしょう。
1人暮らしの場合の生活費シミュレーション
1人暮らしを就労継続支援A型の給料だけで実現するのは、とくに都市部では厳しい現実があります。平均月給約8万6,752円から社会保険料や税金を差し引くと、手取りは7万5,000円程度になると考えられます。以下で、一般的な1人暮らしの最低生活費をシミュレーションしてみましょう。
費用項目 | 金額 |
---|---|
家賃 | 4万円〜6万円(地方なら安い場合も) |
水道光熱費 | 1万円〜1万5,000円 |
食費 | 3万円〜4万円 |
通信費や交通費 | それぞれ5,000円〜1万円 |
医療費 | 5,000円〜(障がいの状況による) |
日用品費 | 5,000円〜 |
合計すると最低でも月10万円程度必要となり、A型事業所の給料だけでは赤字になってしまいます。そのため、障がい年金との併用や家賃補助などの支援制度の活用、あるいは公営住宅の利用などを検討する必要があります。
家族と同居の場合の経済状況
家族と同居する場合、1人暮らしに比べて経済的負担は軽減されます。とくに家賃や光熱費などの固定費を家族で分担できることが大きなメリットです。以下で、親や兄弟と同居するケースを考えてみましょう。
費用項目 | 金額 |
---|---|
家賃負担 | 0円〜2万円(家族の方針による) |
水道光熱費分担 | 3,000円〜5,000円 |
食費 | 2万円〜3万円(食材の共有がある場合) |
通信費 | 5,000円(個人使用分) |
交通費 | 5,000円〜1万円 |
医療費 | 5,000円〜(障がいの状況による) |
日用品費 | 5,000円〜 |
家族への生活費 | 1万円〜2万円(可能であれば) |
合計すると月5万円〜7万5,000円程度となり、A型事業所の給料でも生活が可能な範囲に収まります。ただし、将来的な自立を考えると、障がい年金などと組み合わせて貯蓄を行うことも重要です。
就労継続支援A型の給料を補完する経済的支援制度
就労継続支援A型の給料だけでは不足を感じる場合、さまざまなサポート制度を活用して生活を安定させる方法があります。ここでは、以下の2つについて簡潔にまとめました。
・障がい年金
・生活保護
自分の状況に合った支援を把握することで、経済的な負担を大きく軽減できます。
障がい年金との併用
障がい年金は、障がいの程度によって定められた条件を満たすことで受給できる公的な年金制度です。就労継続支援A型の給料だけでは生活費が厳しい場合、障がい年金との併用によって家賃や光熱費などを補える可能性があります。支給額は障がいの等級や加入している年金の種類(国民年金、厚生年金など)によって異なり、申請時には医師の診断書や手帳が必要となるケースが一般的です。
また、受給には一定の保険料納付実績が求められるため、事前に自身の年金記録を確認しておくと安心です。障がい年金を上手に活用できれば、収入面での不安を和らげつつ、A型事業所での就労を続ける選択肢が広がるでしょう。
生活保護との関係
生活保護は、収入や資産が一定の基準を下回り、ほかの制度や家族の援助でも生活を維持できない場合に利用が認められる公的支援制度です。就労継続支援A型の給料が低く、家賃や医療費などをまかなえない場合は、市区町村の福祉事務所に相談して生活保護の申請を検討することも1つの方法です。
ただし、申請が受理されるには細かい要件や調査があり、申請者の資産状況や扶養義務者の有無なども確認されます。受給が決まったあとも定期的な報告や収入申告が必要で、A型事業所で働いている場合は給料の額に応じて保護費が減額される仕組みです。こうした条件を踏まえたうえで、ほかの制度やサポートと併用しながら、どのように生活基盤を安定させるかを考えることが大切です。
給料を増やす・手取りを多く残す方法
給料を増やすためには、今の収入を上げるだけでなく、支出を最適化して手取りを増やす視点も欠かせません。ここでは、以下の3つを解説します。
・労働時間を増やせる可能性
・アルバイト・ダブルワークの可能性と注意点
・より給料の高いA型事業所に転職する際のポイント
こうした選択肢を知ることで、収入向上の道が開けます。
労働時間を増やせる可能性
就労継続支援A型では、利用者の体調や障がい特性に合わせた労働時間が設定されますが、体力や勤務実績が安定してきた段階で時間を延ばせるケースがあります。たとえば週5日のうち、半分の日を1時間ずつ延長するといった方法です。
ただし、急激に時間を増やすと体調面での負担が大きくなり、結果的に休みが増えるなど逆効果になることも。利用者本人と事業所がこまめにコミュニケーションを取り、少しずつ勤務時間を伸ばすか検討していくのが理想的です。結果として労働時間が確保できれば、給料アップと同時に就労経験の質も高まり、将来的なキャリア形成にも役立つでしょう。
アルバイト・ダブルワークの可能性と注意点
A型事業所で働きながら、追加の収入源としてアルバイトを検討する人も少なくありません。たとえば週末のみ短時間の接客業や事務補助を行うなど、うまく組み合わせれば家計の負担を軽減できる可能性があります。
しかし、ダブルワークにはいくつかの注意点があります。第一に、事業所の就業規則で副業が認められているか、あるいは雇用保険や社会保険の手続きに支障がないかを確認することが大切です。第二に、体力的・精神的な負荷が増えるため、疲れやストレスを感じやすくなるリスクも。こうした要素を十分に考慮したうえで、自分に合った労働時間と働き方を見つけることが、長く安定した収入を得るためのポイントといえるでしょう。
より給料の高いA型事業所に転職する際のポイント
就労継続支援A型事業所は事業者ごとに経営規模や報酬体系が異なるため、同じ業種であっても給料水準に差が出ることがあります。もし現在の職場で給与面に不満を感じているなら、ほかのA型事業所の情報を調べてみるのも1つの手です。
ただし、給料だけでなく、通勤時間や職場の雰囲気、支援体制なども大切な要素です。自分の障がい特性や生活ペースにマッチする環境かどうかも含めて検討することで、転職後の定着率や満足度を高めることが期待できます。
よい就労継続支援A型事業所の見極め方
よい就労継続支援A型事業所を選ぶには、複数の視点で総合的に判断することが大切です。ここでは、以下の5つを簡潔に整理します。
・給料・賃金の水準
・仕事内容と自分の適性
・通いやすさと立地
・支援体制・職場環境
・安定性のチェック
これらを踏まえて、最適なA型事業所を見極めていきましょう。
給料・賃金の水準をチェック
就労継続支援A型事業所は最低賃金が保証される仕組みですが、実際の給料水準には事業所間でばらつきがあります。経営規模や取り扱う仕事の種類によって、時給や月給に差が出るケースも珍しくありません。そのため、求人を探す時や見学時に「平均時給はいくらか」「交通費や各種手当は支給されるのか」といった具体的な情報を必ず確認しましょう。
仕事内容と自分の適性の一致
A型事業所では、製造や清掃・事務作業など多様な業種・職種を扱っており、業務内容は1つひとつ異なります。自分の得意分野や、障がい特性に合わせた作業ができるかどうかは、就労の継続に大きな影響を与えます。そのため、事業所の見学や面接では、具体的な業務フローや必要とされるスキルを詳しく確認するとよいでしょう。
体を動かすことが苦手な場合は、デスクワーク系の仕事が多い事業所が向いているかもしれません。反対に、集中力が必要なパソコン作業よりも体を動かす業務が合っている人もいます。自身の強みや限界を客観的に理解したうえで、仕事内容が適性とマッチするところを選ぶことが、長期的な就労には不可欠です。
通いやすさと立地条件
自宅から事業所までの通勤時間や交通手段は、就労を続けるうえで見逃せないポイントです。遠くて移動に時間がかかると、体調管理や生活リズムにも影響が出やすく、長期的に負担を感じやすくなります。通勤費の支給有無や駐車場の有無、公共交通機関とのアクセス状況も合わせて確認しておくと安心です。
さらに、通う地域の気候や環境、周囲にどのような施設があるかなども、意外に大切な要素となることも。病院やスーパー、役所などが近くにあると、日々の生活や緊急時の対応が楽になるでしょう。自分の暮らしに合わせた通勤しやすい立地条件を選ぶことは、無理なく働き続けるための重要な鍵となります。
支援体制・職場環境の確認ポイント
就労継続支援A型は、障がい特性に合わせたサポートが受けられる利点があるため、支援員やスタッフの質、配置状況などを確認することが大切です。また、利用者同士のコミュニケーションや雰囲気も見学時に感じ取れる場合が多いので、職場全体の空気が合うかどうかも意識してみるとよいでしょう。
さらに、トラブルが起きたときにどのような対応をしてくれるのか、事業所内で上司やスタッフに相談しやすい仕組みがあるかもチェックポイントです。サポート体制が整っている職場なら、安心して自分のペースで成長できます。
安定している事業所を見分ける
A型事業所が安定して運営されているかは、給料や雇用継続に大きく関わります。まずは事業所の運営実績や従業員数、支援を受けている利用者の数といった基本的なデータを把握しましょう。
定期的に給与支給が行われているかや、助成金目当てではなく実際に就労サポートを充実させているかなど、細部の情報収集も欠かせません。過去に経営上のトラブルがあった場合は、その原因と再発防止策を聞いておくとよいでしょう。こうした点を総合的に見極めることで、安心して働ける事業所を選ぶ助けになります。
まとめ:就労継続支援A型の給料だけでなく総合的な視点で判断を
就労継続支援A型事業所の選択は給料だけで判断するのではなく、自分の適性や障がい特性に合った仕事内容や通いやすさ、支援体制など総合的な視点が大切です。障がい年金などの支援制度をうまく活用することで、より安定した生活基盤を築けます。1人ひとりに合った就労環境で働くことが、長く続けられる秘訣です。まずは気になる事業所の見学や体験から始めてみましょう。
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